■ダイナミックデザインの主張





<私たちの視点と主張>

 ● 耐震設計とは、地震に対する安全性を確保すること

    耐震設計は、法規定を満足することが目的ではなく、自然現象である地震に対して安全性を確保することが目的です。
    建築基準法や耐震規定が変わるたびに、全国一斉に「既存不適格」の建物が発生するという人為的災害が繰り返えされてきました。
    私たちは、個々の設計において耐震設計本来の目的を精一杯追求することにより、この恥辱は避けることができるし、そのように努めるのが設計者の役割であると考えます。

 ● 震源域近傍の地震動は非常に厳しい

    従来我が国の建物は、大地震時の地震動として最大加速度300〜500ガル(cm/s2 ) 、最大地動速度=50カイン(cm/s)程度の強さを想定してきました。
    しかし、兵庫県南部地震(1995)や台湾集集地震(1999)など近年の直下地震により、震源域近傍における現実の地震動は、従来の想定レベルよりもはるかに厳しいものであることが判ってきました。
    震源域では、地震動の最大加速度は800〜1000ガル以上、地動速度は100〜150カイン程度に達することも稀ではありません。

 ●  地震動は、全ての構造物を区別なく襲う

    地震動は、構造物の種類や規模、用途や重要度に応じてその強さを加減してはくれません。構造物条件、設計者や建物所有者の意志には関わりなく、どの構造物にも等しく襲い掛かってきます。
    私たちは、病院や官庁施設等の特殊な建物だけでなく、私たちの家族が暮らすマンションをはじめ、全ての建物が、一棟でも多く大地震にも安全な建物として設計されるべきだと考えます。

 ● 「耐震設計目標=倒壊防止」は、お粗末

    従来の耐震設計は、人命確保を目標として、大地震時の強い地震動に対しては「建物の倒壊防止」を設計目標としてきました。
    しかし、兵庫県南部地震では、倒壊を避けることには成功しても、建物内部はメチャメチャとなり、建物は使い物にならず生活の場を失い、ひび割れた建物に資産価値はなく「残ったものはローンだけ」という悲惨な状態が其処此処で発生しました。
    私たちは、下記項目が全て満足された時にはじめて「耐震設計は成功した」と言えると考えます。

  • 人命の確保は勿論、けが人の発生も防止すること。

  • 家具・設備・機器・備品類の転倒・落下・衝突を避け、内部収容物の保全を図ること。

  • 地震直後(建物によっては地震中)・地震後にも建物本来の機能を発揮させること。

  • 容器としての建物・躯体を無損傷もしくは修復可能な軽微な損傷に留め、建物の資産価値を保全すること。

 ● 在来構造での安全性確保は、不可能

    上記の設計課題を達成するためには、建物各階に発生する地震時の応答加速度を200〜300ガル以下に抑制することが必須条件となります。
    建物を強くすればするほど、建物の揺れもまた強くなるため、基礎を地盤に固定する在来耐震構造では、上記目標の達成は不可能です。周期1秒以下(10〜15階建て以下)の短周期構造物では、応答加速度は入力の2〜3倍に増幅されるため、800ガル〜1000ガルという入力に対しては建物各階は2000ガル〜3000ガルにも達し、「テレビは飛び、ピアノが天井に突き刺さる!」という事になります。

 ● 免震構造といえども、その安全性は設計次第

    免震構造は、水平剛性の低い免震層を意図的に創り、ここに変形とエネルギーを集中させ、建物に投入された地震動エネルギーの全量を免震層(免震装置)で吸収することにより、上部構造体でのエネルギー吸収を不要とし、構造体を弾性領域に留めて損傷の発生を防止します。
    免震層の抵抗力を低い値に抑制することにより、上部建物各階に発生する応答加速度を抑制し、家具や設備機器類の内部収容物の安全性を確保し、建物全体の機能維持と無損傷設計を実現します。
    しかし、免震構造は、建物の応答制御を図る手法、ストラテジーであり、「免震構造であれば安全」を意味するわけではありません。「免震構造といえども、その安全性能は設計次第」であることは言うまでもありません。

 ● 免震建物に対する私たちの設計姿勢

    現実の地震動の厳しさを直視し、建物の条件、免震構造の現状の保有技術と可能性、留意点を踏まえて、より広くより高い観点から最上の解決策を模索します。
    免震建物の安全性能は、免震層(免震装置)のエネルギー吸収性能と変形能力、特に、強い地震動に対して安全性を確保するためには、「如何に大きな許容変形量を確保するか」が設計の命と言えます。
    私たちは、一つ一つの設計において、免震構造の全技術、あらゆる技と智恵を総動員して、その建物条件で達成できる「最高の安全性能」の実現に、精一杯の努力を投入しています。

<わたしたちの実践>

 ● 免震構造技術におけるこれまでの貢献

  • 1995年の兵庫県南部地震の1年後に、その教訓を踏まえて「100カイン無損傷設計」を実現。現実の設計において免震構造の設計で頑張れば、「震度7の地震動にも十分対応できる」ことを実証しました。

  • 以後、私たちは全物件において「100カイン無損傷路線」を堅持し、実免震建物の設計例を通して高性能免震建物の具体的な実現方法・課題解決方法を示しながら、建築界における孤高の歩みを続けています。

  • 1996年12月、(財)日本建築センターの免震構造評定方法において「耐震性能のクラス」の評価が導入されました。 ダイナミックデザインは、いち早くその「最高ランクC4−A、第一号」を達成し、極めて高い耐震安全性能が実現可能であることを示しました。

  • 1999年の台湾集集地震において観測された断層運動を伴う極めて強い地震動に対しても、対応可能であることとその解決方法を提示しています。(日本建築学会、地盤振動シンポジウム2000/11)

 ● 100カイン無損傷設計の実力

  • 私たちは、「100カイン無損傷設計」において、兵庫県南部地震の震度7地域で観測された100カインを超える地震動に対する安全性は確保しています。

  • 設計で許容できる入力地震動の限界値は、現在のところ、「最大入力速度で100〜200カイン程度」というのが私たちの一般的な水準となっています。

  • どのような地震に対してもこれで十分とは言い切れませんが、50カインレベルの設計に比べれば格段に高い安全性能を確保しています。

 ● 新たな課題の解決に挑戦しています

  • 私たちは、免震構造・制震構造をはじめとして、より高度な、より困難な課題に対して、常により合理的な新しい解決方法を模索し、必要に応じて効果的な新技術を開発・実用化して、免震・制震技術の新世界を切り開いています。

  • その新技術を設計に採用し、創意工夫を凝らしてつねに、より優れたより安全な建物の実現に努めています。

  • また、効果的な新技術は、進歩的な設計者や建築界に広く 提供し、社会貢献に役立てています。