■軟弱地盤の建物はどうする -軟弱地盤でも免震がよい-

東京をはじめとしてわが国の都市の多くが沖積平野上に発達しているため、建物計画地はしばしば第3種地盤に該当します。国土面積が限られているわが国では地盤が悪いからと言って建物を建設しないわけにはいきません。「軟弱地盤に免震は避けるべきだ」という意見がありますが、それは本当でしょうか。軟弱地盤上の建物の耐震対策はどうすればよいのでしょうか。

1.軟弱地盤の地震動特性

兵庫県南部地震では軟弱地盤上でもいくつかの観測記録が得られました。中でも「ポートアイランド」は埋め立て地というだけでなく、GL-83mから地表までの深さ方向のアレイ記録が得られたという点で注目されました。679Gal(GL-83m)から341Gal(GL±0)へと地表に近づくほど最大加速度が下がっています。地盤の非線形化により短周期成分がフィルターされた為ですが、最大速度は67cm/s(Gl-83m)から地表では91cm/sへと増幅し、強いエネルギーを持つ波に成長しています。軟弱地盤の大地震時地震動としては、最大加速度で300〜500Gal,最大速度で 90〜100cm/s程度は覚悟しなければなりません。


図1軟弱地盤での地震記録

2.免震vs耐震:軟弱地盤での耐震性能比較


右図は、東京都江東区に建設中の地下2階地上14階建の免震建物です。
GL-30mまでN値ゼロに近い軟弱な地層が続いています。建物総重量18,000トンを地下1階に設置された直径1.5mの大型LRB12体が支持しています。
図3はこの建物を免震構造と在来耐震構造で設計した場合の地震応答解析の結果です。入力地震動はポートアイランド地表での記録地震動をVmax=100cm/sに拡大したもの及び工学的基盤(GL-41.5m)以浅の地震動の伝播解析により建設地の軟弱地盤特性を評価したもので、いずれも最大速度 100cm/s前後の強い地震動としています。


図2 ハイシティ清澄

     

入力地震動

Amax

Vmax

Dmax

KOBE PI-0m

376

100

43

KOBE PI83m-S

527

116

45

BCJ-L2-S

512

96

60


表1 入力地震動諸元

在来耐震構造建物の中層階以上では最大応答加速度が1Gを越える強い揺れが発生します。免震構造ではその揺れの強さが1/5〜1/10(150〜200Gal)程度に抑制されるため、家具などの内部収容物も含めて建物全体を無損傷で守ることができます。
但し、本例で示したような強い地震動では、免震装置に60cm〜80cmの大きな水平変形が発生しますので、免震装置はこの変形を許容できることが必要です。


図3 免震vs耐震:軟弱地盤での地震応答の比較

3.軟弱地盤上の免震建物の特徴

軟弱地盤に建設される免震建物の地震応答特性には以下のような特徴があります。
・入力地震動から短周期成分がフィルターされ、高次モードが励起されず、応答加速度抑制効果が高い。
・免震装置によるエネルギー吸収効率が高まる。
・やや長周期成分が強い入力地震動では、免震装置に 発生する変形量が大きくなる。
・周期4〜5秒の地震動成分は深い地盤構造で決まり、
・深さ数十mの表層の軟弱地盤は周期2秒以下の成分 に影響するのみで、免震建物の安全性には関係ない。

4.結論

軟弱地盤でも「免震が圧倒的に安全!」である。
但し、大変形を許容できるグレードの高い免震であることが大切だと考えます。