■免震・制震構造の設計思想 1 -耐震設計の課題と免震のストラテジー- |
死者 6,000人、経済損失10兆円、廃棄物2千万トンを僅か10秒で生み出した阪神大震災。免震・制震構造を含めて「耐震設計はどうあるべきなのか」原点に帰って設計思想を再考します。 |
1.現行耐震設計思想の本質 |
新耐震設計法(建築基準法)は、 |
2.耐震設計の課題と苦悩 |
建物が倒壊せず設計目標が達成されれば、めでたしとなるでしょうか。 |
3.地震動の厳しい実態 |
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現実に震度7が発生、最大加速度 1000ガル前後が記録され、実際の地震動は非常に厳しいことが判ってきました。世の中の建物は殆どが周期1秒以下の中低層建物です。短周期構造物の揺れは入力地震動の2倍から3倍には増幅されます。つまり建物には現行設計地震力の10倍の力が作用することになります。これでは通常の建物の設計は成立せず、建物内の設備や収容物の安全確保まで考えるとお手上げです。 |
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4.免震構造のストラテジー |
免震構造は、この難題を以下のアプローチで解決します。先ず、上部建物各層に比較して極端に剛性の低い免震層を構成し、ここに全ての変形とエネルギーを集中させます。建物に投入される地震エネルギーの全量を免震装置で吸収し、上部建物をエネルギー損傷から解放します。免震装置の抵抗力を一定に保ち、上部建物にはそれ以上の力を作用させません。その結果建物全体が一つの塊となって、どの階も同じ揺れ方となります。激しい振動をやさしい揺れに変えて、建物も中身も共に無傷で守ろうという考えです。免震装置が建物重量を支えながら如何に大きく水平変形できるか、これが免震建物の安全性のカギとなります。 |
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